07/05
Tue
2011
言えば、楽になるだろうか。
「静雄ー、大丈夫かい?」
「おー・・・なんとか、な。」
保健室のベッド。最近俺はここに入り浸っている。
唯一の友人の新羅が保健委員で本当に良かったと思う。
理由はただ1つ。この忌々しい天気のせいだ。
「まったく、君の昼と夕方の差には驚く、というより笑っちゃうよね。」
「よし、新羅。手前夕方になったら覚えてろよ。」
「ごめんなさいすみませんでした殴らないでください。・・・・・ハイこれ。学校だとやっぱ小さい缶しか売ってなかった。とりあえず5本ほど買っておいたけど。」
「いや、あるだけでも助かる。サンキュな。」
「・・・缶潰さないでね」
「潰すかよ。・・・・・・手前が怒らせなきゃな。」
そんな冗談(にしておきたい)を言いながら、俺は新羅からトマトジュースを受け取った。
「・・・・・今日も晴れてるねー」
「ああ、早く雨降って・・・つうか曇ってくれねえかなぁ。」
1日だけでも大分違うのに。と思いながらジュースを飲んだ。
俺は人間じゃない。吸血鬼だ。
といっても物語で聞くような感じではない。特殊・・・なのかそれとも元々なのか周りに吸血鬼がいないから確認は出来ないが、俺は別に陽に当たっても灰になって消えるわけでもないし・・・・・・・・ただ長時間いれば貧血のようになるが。
無差別に血を欲するわけでもない。それどころか今まで1度も血なんか欲したことなんか無い。
吸血鬼と言っても人間とまるっきり同じ生活をしていた。
そう、今までは。
「でもさぁ、そろそろやばいんじゃない?食欲も無いんでしょ?」
「んー・・・・・・」
「・・・・・試しに家にある血液パック、飲んでみる?」
「飲む気になるかよ、あんなの。つうか前試してみてダメだったろ。」
「だよねえ。」
ある日を境に、俺は無性に血が飲みたくなった。・・・それもただ1人だけの。
その、ある日はいつだったのかはハッキリは覚えていない。
だけどそいつの頬から血が、と言っても少し擦った部分から血が少し伝っただけだ。
なのに、
目が離せなかった。
それ以来、俺はこの状態が続いてる。
「・・・ねえ、静雄。もう思い切ってさ、言ってみたら?」
「・・・何を。」
「何って、告白に決まってるじゃん。」
「・・・・・・あぁ!?な、何だよ告白ってよ!!お、俺にはそ、そんな奴・・・」
「・・・・ねえ言っとくけど、僕、君の態度見て気づかないほど鈍感じゃないからね?」
確かに新羅には俺が吸血鬼だと言った。血が欲しいけど、飲めない。とも言った。
だけど誰彼かまわないというわけじゃない、とか、ましてや好きな奴がいるなんて言ったことも無い。
もしやこいつ、
「・・・言っておくけどエスパーでもないからね。」
「っ!う、うるせえな!そんな事思ってねえし!!」
「そう?まあいいけどね。で、どうするの?するの?しないの?」
「・・・・そんなの出来てたらこんなんになってねえだろ。」
「静雄・・・・・」
そうだ、それこそ無理な話だ。
ただでさえ、『人間の俺』はこんなにも嫌われているのに、
俺が人間じゃないなんて知ったら
アイツは─────
「・・・でも案外、」
「あ?」
「いや、なんでもない。あ、もう授業始まるから僕教室戻るね。昼休みにまた来るから。」
「おー・・・」
ま、今更ンな事考えたってしょうがねえし、寝よ。
新羅を見送ってから(といっても保健室から出るのを見ただけだが)、俺はまた眠りについた。
++++++++++
静雄、君はそんなに悲観的に考えなくても大丈夫だと思うんだ。
「告白出来てたら、ねえ。・・・・あれ?臨也、どうかした?」
「!えっ、あ、えーっと・・・どうしたもなにも、ほらさっき移動教室だっただろ!?その帰りだよ!」
「ふーん・・・そう。」
移動教室の帰り、ね。
僕等の教室と、さっき授業で使った家庭科室は2階。
で、ここは1階。しかも棟が違うから、教室とは逆方向。
それに彼が向かう先には─────もう保健室しかない。
「・・・・静雄の事、気になる?」
「きっ・・・になるわけないじゃん!まあ、でも?何かネタになりそうなら喜んで聞くけど!?」
「本人に聞いてみたら?」
「はぁ!?そんなの無理に決まってるじゃん!シズちゃんが俺に自分の事話すわけないじゃん・・・」
「えー、そんなのわかんないじゃん。」
「分かるに決まってるだろ!俺は無駄な事をしない主義なの!」
「無駄、ねぇ・・・」
静雄、この通り臨也はこの調子だから、もう君が頑張るしかないんだよ。
だからさ、
ここは思い切って、
試しに言ってみない?