08/03
Tue
2010
最近ようやく静雄とアイツの関係に決着がついたらしく、ようやく俺の職場も平和になった。
────と思うのはまだ早いらしい。
最近、静雄がおかしい。
おかしい、というのは体調とかではなく、行動だった。静雄は暇さえあれば、携帯を見るようになった。
メールを打つとか、そういう動作をするわけではなく、ただ、画面を見るだけ。
この時代、携帯を逐一気にするなんて、珍しいことじゃない。たが、静雄は別だ。なぜなら、静雄は今まで持ってるとはいえ、携帯に全く興味が無かった。
家に忘れても気にしないどころか、俺が指摘するか、下手すりゃ家に帰るまで忘れていたことに気づかないことだってある。たとえ持っていても電源を切ってることなんて、静雄だと珍しいことではない。くだらない広告メールにキレて、っつうのもあるが、1番多い理由はただの電池切れだったりする。
そんな男が急に携帯を気にしだしたら、誰だって疑問に思うものだ。
・・・とはいえ、仕事の相方の立場から言えば、携帯をそうやって肌身離さず持っててくれたら、連絡がしやすくて非常に助かるのだが。
しかしこればっかりはどうにかしてもらえないだろうか。
携帯を見た後、・・・・・不機嫌になるのは。
携帯を見る度に不機嫌度が高まる分、取立ての度に物を壊す破壊力も凄まじくなっていく。
・・・まあ、その恐怖のおかげなのか、金の回収率は良いのだけれど。
だけどその分ほぼ半日一緒にいる俺の心労がまたもヤバイ状態だ。
そして静雄が携帯を気にしだしてから、約1週間。
静雄の不機嫌度は朝っぱらからMAXに達していた。
・・・・・・・あんまり後輩の腹の内なんて探りたくねぇんだけどな。
しかしこの状況は後々影響するだろうしな。・・・・主に俺に。
「・・・静雄。そんなに気になるなら、電話してみたらどうだ?」
「な!俺は別に・・・・臨也からの『会いたい』なんて電話気にしてないっす!」
そうか。もう原因が分かった。
「・・・・・・で?どれぐらい会ってないんだ?」
「・・・・2週間ぐらい。最初はアイツも仕事持ってるし、仕方ねえと思ってたんですけど・・・」
携帯を気にしだしたのが1週間前だから・・・ということは、最初の1週間は耐えてたんだな。おお、静雄にも忍耐力がついたのか・・・!偉いぞ静雄!
ここでは空気読んであえて言わねえけど!!
「じゃあよ、ここはお前が大人になって連絡してやったら?」
「嫌っす。」
お、珍しく静雄が否定した。しかも即答。なんだ、もしかして折原のやつ、まーた 何か悪さでもしたのか?
「いっつも『会おう』って言い出すの俺からだから、たまには向こうに言わせようと思ってるので。」
「・・・・・・・・そう。」
まあ・・・その気持ち分からなくもないが。
「まあ・・・別にこなくったっていいすんけどね!あんなノミ蟲の電話とかメールとかなんて!さ、トムさん!今日も仕事頑張りましょう!!」
ええー・・・普通の笑顔ならともかく、それプラス額に血管がちょい浮き出てる人とはちょっと頑張れないわ、俺。つうか、それもうキレる寸前じゃん。それも自棄になってるじゃん。
とりあえず、『会いたい』は向こうに言わせるとして、そのきっかけの電話は静雄からかけてやれば?
と言おうとしたら、静雄の携帯が鳴った。
こっちが画面を見ずとも、画面を見た静雄の顔を見れば誰からなんて一目瞭然で。
「あっ・・・す、すいませんトムさん!ちょっと電話出てきてもいいすか!?」
「ああ・・今日別に急ぐ用無ぇし、ゆっくりでいいぞー。」
あー、今日は静雄の為にも、早めに仕事切り上げてやるかー。
口はぶっきらぼうだが、電話が嬉しいのが丸分かりの静雄の後姿を見ながら、そんなことを久しぶりにのんびり考えていた。
あー、やっぱり平和が1番だわ。
まあ、電話を切った途端
「トムさん!今から早退してもいいすか!?」
と言ってきた静雄にはさすがに注意したけども。