09/08
Wed
2010
『正義の味方みたいだった!』
今でもその笑顔、台詞を忘れたことはない。
「ぅおおおおらああああ!!」
ガッシャーン!!
ピピーーーーーッ
「こおーーらあーーー!そこ自販機をブン投げなーーい!!」
若い男の雄叫び。
何かの破壊音。
けたたましい笛の音。
警察官の怒号。
この一連の流れは池袋の日常であった。
ついでにいえば、
「・・・シズちゃんさあ、」
「その呼び方止めろ」
「じゃあ早く帰れよ。」
池袋最強といわれる男が交番に居座るのもここ最近日常化しつつある。
「あぁ?手前がここに来いって言ったんだろうが!つうか手前が勝手に連れてきたんだろうが!!」
「・・・あのねー、自販機が飛ぶなんて普通に考えたら事件だよ?警官として話聞くのが当たり前でしょうが。」
「仕掛けてきた向こうが悪い。」
「はいはい、そんな事分かってるってば。だから向こうが何してきたのか教えてって言ったんでしょうが。」
「・・・・・・おう。」
・・・ちくしょう、簡単にそういう事いうなよ。踏ん切りつかねえだろ。
臨也を想い始めてもうどれぐらい経つだろう、と静雄は自分に呆れながら考えた。
簡単に言えば一目惚れだった。その1回しか会っていないが、忘れることは無かった。
まあ、
『ちょっと、池袋最強の自動喧嘩人形サン?そんな簡単に公共物ブッ壊されるとこちらとしてはすんごい困るんですけどー。大人なんだからさあ、ちょっとは大人しくしようとは思わないわけー?』
大人になってから再会した時のコイツの印象は物凄く最悪だったのだが。
「────じゃ、お迎えお願いしまーす♪」
「・・・あ?手前お迎えってなんだよ。つうか誰に電話したんだよ。」
「君がぐずってなかなか帰らないから君の上司であるトムさんが責任とって引き取ってください、という意味になります。このお迎えの意味は。」
「うぜえ!つうかトムさんに迷惑かけんな!」
「いや自分が子供扱いされた事にまず怒れよ。・・・まあ、いいや。話はもう聞いたし、トムさん来てくれるみたいだから、お迎え来るまでお茶でも飲んでれば?・・・ってこっちが言う前に新聞なんか読んで勝手に寛いでるとかどういうことなの。」
「いいだろ別に。・・・!おいガキ扱いすんな!」
「いや、遅えよ。・・・ったく、お茶入れなおしてくる。」
チッ、相変わらず性格最悪だな。・・・それ知ってもまだコイツを好きとか言ってる俺も最悪だな。
あとトムさん迷惑かけてすんません。・・・もう少しだけココにいたいんです。
つうかせめてよ、手前思い出すぐらいしろよ。俺と手前が初めて会ったのは大人になってからじゃなくて、
「はぁ・・・高校の時に会った時はもっとクールな人だと思ったのになぁ・・・」
こうこう、の・・・・あ?
今、なんて。
「っ待て!」
「っ!?」
咄嗟に臨也の腕をつかんだ。お茶なんてどうでもいい。
それよりも、
「覚えて、たのか?つうか、分かってたのか?」
「何、」
「高校生の時に、1回だけ、会ったことがある事。」
「っ!?覚、えて、」
臨也の顔が赤くなった。なんだよ、やっぱり覚えてたのかよ。何だよそれ。今まで俺がどれだけ・・・
少しムカついて内心舌打ちをした。でもそれよりも嬉しかった。嬉しさの方が強かった。
「俺は覚えてた。ずっと忘れなかった。・・・・手前は?」
「お、れは・・・」
「忘れない、忘れるわけないよ・・・」