06/16
Wed
2010
「・・・・・・・・」
「・・・わー、店目の前にしてノーリアクションは無いでしょ波江サン。てか嫌い?こういうトコ。」
「別に。こういう所に今まで行ったこと無かったから、少し驚いただけよ。」
「そ。じゃあせっかく来たんだから楽しもうよ!ケーキバイキング!!」
『俺今無性にケーキが食べたいんだよね!だから付き合って!』
なんて言われて渋々付き合ってここまで来たけど・・・・まぁ、後悔はしてないわね、今のところ。
初めて来たけど、甘い物嫌いじゃないし。・・・むしろ好きな方だから少し興味あったし。
それはなんか癪だから臨也には絶対言わないけど。
「・・・・あなた結構甘党だったのね。いつもブラックしか飲まないから嫌いかと思ってたけど。」
・・・てっきりココに来たのは「こんな所に入りたがる人間ってどんなのか見てみたかったんだよね~」のような理由かと思ってたのに。
目の前に座っているこの男は「ケーキが食べたい」というのはどうやら本気だったらしい。
自分が選んだケーキを見る目がまるで子供だ。
「んー、別にそこまでじゃないとは思うけど。毎日お菓子食べたいとか思わないし。コーヒーだってブラックが1番好きだし。だけどさー、疲れた時とか何だか急に甘い物が食べたくならない?俺、その時は結構食べれるんだよね~。」
「まあ・・・否定はしないわ。」
驚いた。この男にも一応人間らしい部分もあったのね。
「あれ、今俺に対して失礼な事思わなかった?」
「思ったけどそれが何か?いつもの事でしょう?」
「ひどい!波江がそんな冷たいなんて思わなかった!」
「・・・あらそう。じゃ、そんな冷たい人からのケーキはいらないわよね?あげようと思ったんだけど。」
そう言って私が指したのは、臨也が好きそうと思って持ってきたケーキ。
案の定、臨也はそのケーキをみて固まった。
「え!?・・・ふ、フフン!そんなの貰わなくたって、ここはケーキバイキングだよ?欲しかったら自分で取りに行くs」
「これ、最後の1個だったのよね。」
「!!」
「さあ、どうするの?」
「~~~~~っ・・・」
・・・・嫌だわ、しばらく一緒にいたせいで、私にも臨也の歪んだ性格がうつっちゃったのかしら。
たかがケーキ1個の為にどうするか悩んでる彼が、こんなにも、
可愛い、だなんて。
「っぷ!」
「!・・・なんだよ」
「あら、ごめんなさい、何でもないわ。ほら、これ。あげるわ。」
「い、いらないよ別に!頼んだわけじゃないし!」
「そう。じゃあ、しょうがないわね。私もいらないし、戻すわけにもいかないし。後は・・・廃棄という道しか残ってないのねこのケーキは。」
「!だっ、たら・・・しょうがないから食べてあげるよ!」
「そう?助かるわ」
しょうがない、とか言いながらも、食べた途端、笑顔になるってどんだけ現金なのよ。
と不意に目の前にケーキが乗ったフォークをさし出された。
「さすが波江だね!これ超美味しいよ!ちょっと食べてみなよ!!」
・・・・コイツ、この行為が他人の目から見たらどう映るのかわかってないのかしら。
───────ま、いいわ。
ぱく
「そうね、美味しいわねそれ。」
「でっしょー!さすが波江センスいいね!!」
「・・・そんな褒めても何もないわよ。ああ、その味が好きならこれも好きだと思うけど・・・食べてみる?」
「え!いいの!?やった♪」
ぱく
「うん!それも美味しいね~」
「ねえ、臨也。」
「何?」
「食べさせ合いなんかして、他人から見たら私達どう思われているのかしらね?」
「へ・・・・・・・・・・・・・!!??な、みえ!もしかしてワザとやっ・・・!」
「さあ?どうかしらね。」
ああもう、本格的にうつっちゃったみたい。
あなたの慌てた顔がこんなにも気に入ったなんて。
こうなった以上、責任とってもらうわよ、臨也?