07/25
Sun
2010
嘘を ついた
愛情なんて なかった
あいつの 手を握ったり 抱きしめたりした その優しさも
あいつにむけた その笑顔も
全部 全部 嘘だった
きっかけは新羅に言われたことだった。
「いっそのこと臨也と仲良くしてみたら?」
「新羅、手前・・・首へし折られたいのか」
「ちょっと待ってよ。本当に真面目に言ってるんだから、とりあえず最後まで聞いて。・・・俺は思うんだけど、静雄が求めてる平穏への1番の近道は臨也を殺す追い出すとかじゃなくてそれだと思うんだ。そしてそれは静雄から歩み寄らないと成立しないとも思う。・・・最初に嫌いになったのは静雄だからね。」
「・・・なんで俺が最初だって分かるんだよ」
「『気にいらねえ』」
「!」
「覚えてるかい?君は臨也に会って早々、そう言い放ったんだよ。臨也は・・・まあ利用する気満々だったけど、その為とはいえ君に歩み寄ろうとした。けど、君は開口一番にそう言った。・・・そう言われて誰が好かれるなんて思う?」
「それは、」
「だからね、静雄。僕は別に親友に、というか別に友達にならなくてもいいと思う。でも少しぐらい君から歩み寄るべきなんじゃないかな。・・・・暴力の無い、平穏が欲しいならね。」
「・・・・・・・考えておく」
そしてその後いきなり臨也に告白された。
殺し合いの最中に言ってきたから、どうせ俺から逃げるためにテキトーに言ってるだけなんだろう。
いつも俺なら、「そんな冗談通用すると思ってんのか」と言って終わっただろう。
だけど、
「少しぐらい君から歩み寄るべきなんじゃないかな。・・・・暴力の無い、平穏が欲しいならね。」
さっき新羅が言っていたことを思い出した俺は、
「俺だって、・・・手前の事がずっと好きだったんだよ。だからっ・・・つ、付き合え!!」
嘘を、ついた。
それからはまるで嘘みたいだった。
殺し合いの回数が極端に減り、その分臨也のことを知る機会が多くなった。
髪がサラサラしてるとか、男だけど俺と違って指が細く綺麗だとか、思ってた以上に細い身体とか、触れて初めて分かった事が多々あった。
1番驚いたのは臨也の笑顔だった。
いつもの人を見下すようなムカつく顔じゃなくて、嬉しそうに笑うのを初めて見た。
────死ぬまで見ることはないだろうと思っていた顔だった。
その顔を見てから、俺は自分に言い聞かせるようになった。
騙されるな、本気になるな、相手はあの臨也だぞ、本気なわけが無いだろう、
ひとりよがり、なんてむなしずぎるだろ。
「どうせ臨也がすぐ飽きるだろ。あいつは本気じゃないだろうし。」
それも新羅に言った、というより自分に言い聞かせるように言った言葉だった。
それがまさか、臨也に聞かれるなんて
別れようかシズちゃん。
もう池袋にも来ないであげるよ。
さよなら
あれ以来、本当に臨也は池袋に来なくなった。
これで、いいんだ。これが俺が求めてた平穏なんだ。
なのに
後悔と
罪悪感と
俺、本気でシズちゃんが好きだったんだよ?
その言葉と
後ろから少しだけ見えた臨也の顔が、
──────あいつの泣き顔が
いつまでも消えなかった。