08/16
Mon
2010
初めて相談をされた。
それも、恋の。
「静雄、どうしよう。僕、臨也が好きみたいなんだ。」
そう言った新羅の顔は、今までに見たことが無かった。
顔全体を真っ赤にして、どうすればいいのか分からない顔なんて。
「・・・・新羅、お前、」
「うん、ごめん、わかってるよ。君が臨也を大嫌いって事も、そもそも臨也は俺達と同じ男だって事も。
ごめん、こんなこと言われても君にとって迷惑って事わかってるんだ。でも、誰かに聞いてもらわないと、自分だけじゃもうどうしようもなくて、」
「新羅、落ち着け。まあ・・正直驚いたけどよ・・・俺でいいなら話聞いてやるからよ。」
それから、しばらく新羅の話を聞いていたが・・・
支離滅裂、って言うんだっけかこういうの。新羅はどちらかというと、感情的にならず何事も順序立てて言う奴だが、今の新羅はそんな事すら考えられないようだった。
それほどまでにこいつは──────
「・・・・ありがとう、静雄。グシャグシャになってた考えを全部吐き出したせいか、少し落ち着いた。ごめんね、変に取り乱して。」
「謝んな。手前はなんも悪ィ事してねえだろ。」
「・・・・あは、静雄が僕にそんな事言うなんて、なんか気持ち悪いね。」
「安心しろ。そんな口利くなら、明日から容赦無くブン殴ってやるよ。」
「ごめんなさいすいませんでした。・・・でも本当に感謝してるよ。君に話して良かった。じゃあ、僕先に帰るね。」
「おう、明日な」
新羅と別れて、俺は屋上に向かった。
なぜだか、このまま家に帰る気になれなかった。
相談をしてくれたのが嬉しくて、っていうのもある。
けどそれより、新羅の話を聞いていく程デカくなっていったモヤモヤが気になった。
まあ、たぶんそういう恋愛事なんて話したことなかったから、それで変な気分になっただけだろうけど。
屋上で少し風に当たれば、俺も落ち着くだろう。
そう思いながら屋上の扉を開けた
と同時にドアノブをぶっ壊してしまったのは不可抗力だと言いたい。
なぜなら開けた途端、最初に目が入ったのがあの臨也だったのだから。
「・・・・チッ」
奴は眠っていて、ぶん殴るチャンスだったが、今はそんな気がしなかった。
くそ、新羅の話を聞いたせいだ。
なんとなく臨也に近づいて目線を合わせるように(といっても奴は寝ているが)しゃがんでみた。
・・・・新羅はこの性格最悪野郎のどこを好きになったんだろう。
確かに外見は綺麗だと思う。
肌は白いし、風でなびいてる髪は柔らかそうだし、まつげも長いし、今は閉じているけど紅い目も綺麗な色をしている。
それに唇だって、
触れたら柔らかそうな──────
「・・・・・ん」
「!!」
今、何した。
今、俺何した。
今、俺は、こいつに、・・・・・・キスしたのか!?
うわ、俺最悪だ。
人の寝込み襲うと、か・・・・・・・いやいやいや。
最悪と思うところが違うだろ俺。
最悪なのは、
「・・・・ん~」
「!」
やべ、今起きられたら困、
「 」
「───────」
あ。
バァン!!
「・・・・・んぅ?誰だよ大きい音出し・・・ってあれ?誰か来たと思ったんだけど。」
「はっ、はっ、・・・・・はぁ、クソッ」
気がつくと俺は教室に戻っていた。
どれだけ俺はこの短距離を必死で走ったのだろうか。
止まった途端、焦ったさっきよりも暑く感じる。
ああ、そうか。
モヤモヤしたのも。
キスを最悪と思わなかったのも。
俺も臨也の事が。
「・・・・・・・ちくしょ、」
何で気づいてしまったんだろう。
何で新羅の話を聞いてしまったんだろう。
何で屋上に行ってしまったんだろう。
何で
『・・・・ん~、しん、ら・・・』
あんな顔で呼ぶ名前が、俺じゃねえんだよ。
何でもっと
「早く気づかなかったんだよ・・・・」
頬を伝ったのは汗なのかなんなのか分からなかった。