02/02
Thu
2012
俺は臨也が好きだ。愛してる。
そんな臨也と昨年の暮れから付き合う事になった。付き合ってから分かった事だが、どうやら俺等は高校生の時から好き合っていたらしく、今までの俺達は一体何やってたんだとちょっと思ったが、結果恋人という関係になれたのだから、それはもうどうでもいい。
とにかく俺は8年も前から臨也が好きで、それは冷めるどころか付き合ってから臨也の事を詳しく知るようになってもっと好きになった。
そんな臨也に、俺は自分の誕生日を2人きりで祝ってほしかったわけだが、
「あのな、臨也。その、今週末な、俺の誕生日なんだ。だから、その・・・ふ、2りっk」
「なーんだ。シズちゃん、ちゃんと自分の誕生日覚えてたのか。もちろん、知ってたよ!だから28日楽しみにしててね!」
「お、おう!」
「『皆』も張り切ってパーティーの準備してるよ!大勢の人に祝ってもらうなんて、シズちゃんってば幸せ者だねえ~♪」
と、そんな臨也に満面の笑顔で(すげえ可愛い)言われたら、
「・・・・・・・・・・・・・お、おう・・・・」
と答えることしか出来なかった。
そりゃあ自分の誕生日に家族以外でパーティーを開いてくれるなんて、今まで無かったから、その好意はすげえ嬉しい。嬉しい、けど。
だけどせっかくの誕生日。しかも臨也と付き合い始めてから初めての誕生日だ。
だから俺的には臨也といつも以上に1日中イチャコラしたいわけで。だがしかし、皆の、臨也の好意を無下には出来ねえ。
パーティーは夕方からやるから、せめてそれまで、半日だけでもと一瞬思ったが、パーティーの準備があるみてえだし、かといってパーティーが終わった夜は、参加者の大半は大人だろうから、そのまますんなり終わるなんてまず無いだろう。
・・・・・・・・・・仕方ねえ、今年の俺の誕生日は諦めよう。その代わり臨也の誕生日に思いっきり爆発させよう。
そんな踏ん切りがようやくついた誕生日前日の夜、事件は起きた。
それはもう日が変わりそうな時間で、明日のパーティーの時間まで何してようかと、考えながら布団に潜ろうとしていた時だった。
ダンダンダンダン!!
ピポピポピンポーン
「!?」
玄関から容赦無くドアを叩く音と、遠慮無いインターホンの音。
こんな時間に新聞の勧誘は無えだろうし、大家さん・・・はこの間ちゃんと家賃納めたし、最近は壁壊してねえし、1回嫌味ったらしく注意されてから、臨也とスルのは家では控えてるし・・・・となると残りは・・・
バァン!!
「ぶっ」
「オラァ!!ド深夜に殴り込み来るとかふざけんなよ手前等ァ!!!・・・・あ?」
俺が勢いよく開けたドアが直撃したのは夜襲仕掛けたふざけた野郎共の顔面じゃなくて、
「い、臨也・・・?」
「っっっっっったいなあもう!シズちゃん勢いよくドア開けるとか何考えてんの!?馬鹿じゃないの!?いや馬鹿だ!大馬鹿だ!!」
「わ、悪ぃ・・・・」
可愛い恋人の顔面だった。
「臨也、大丈夫か・・・?」
「うん・・・なんとかさっきりよりかは痛みが和らいだよ・・・」
「悪かった。・・・・今度からちゃんと覗き穴を見てから開ける。」
「絶対だよ。・・・・あ、そうするとシズちゃんに夜襲仕掛けられないからやっぱダメ。」
「手前な・・・」
「あっは、冗談だよ。半分」
「半分かよ。」
とりあえずタオルを濡らして、しばらく顔を冷やした。
見た所、特に変形した所は無い・・・けど、明日朝一で新羅に診てもらおう、そうしよう。
・・・・・そういや、臨也は何しに家に来たんだ?
玄関で見た時、少し汗ばんでるように見えたし、あんな全力でドアを叩いたりとかも普段はしない。
もしかして何かに追われてたのか?
「手前、何かあったのか?つうか今度は何をやらかしたんだ?」
「はぁ!?失礼な!今は何にもしてませんー!!」
「『今は』ってことは後で色々やらかすつもりなんだな・・・まあそれは置いとくとして、じゃあ何でこんな時間に家に来たんだ?」
「う、えと、それは・・・」
「誰かに追われてたのか?」
「うっ、ううん!そうじゃないんだ!・・・えーっと、あの、ね・・」
「?」
こんなに話すのにもだもだしている臨也は珍しい。いや、初めてかもしれない。
俯いて、時々様子を窺うようにチラッと上目づかいでこっちを見て目が合ったと思ったらまた俯き。
口から出る言葉も「あ」とか「その」しか言わない。
「急ぎの事じゃないなら、今言わなくても別にいいんだぞ?」
と言おうとした時、携帯の着信音が部屋に響いた。俺のメールの着信音だった。
もしかしたら、俺が臨也にずっと集中しているから言いにくいのかもしれない。そう思って、臨也に断りを入れてから、携帯を開こうとした時、
「だめ!まだ開けないで!!」
と言いながら臨也の手によって止められた。
「?なんだよ、誰からか確認するだけで、ちゃんと話は聞くぞ?」
「そ、それだけでもダメ!俺が先!!」
「先?」
一体何と競っているんだコイツは。そう思いながら臨也を見てると、臨也はまた俺から目をそらしたかと思うと、それは一瞬だけですぐに、意を決したように、俺を見つめてきた。
「シズちゃん!あの、あのね!その・・・・誕生日、おめでとう!!」
「・・・・・・・・は?」
ああ、日付いつの間にか変わってたのか。いや、そうじゃなくて。え、ちょっと待て、これだけ溜めて言いたい事って・・・それ?
それが顔に出てたのか、臨也の顔がみるみる赤くなって、そして急に立ち上がった。
「じ、じゃあそういう事だから!もう帰るね!!今日のパーティー忘れないでね!」
「はあ!?おい、ちょっと待てよ臨也!ちゃんと説明しろよ!!」
そのままはいそーですか、と帰らすわけにもいかず咄嗟に臨也の腕を掴む。
臨也の顔は赤いままだ。
「なあ!どうしたんだよ!」
「うるさい!シズちゃんは何も気にしなくていーの!これは俺のただの自己満なんだから!!」
「はぁ!?だから何を満足したんだよ手前はよ!」
「~~~っだから!俺はただ1番最初にシズちゃんに『おめでとう』って言いたかったの!!」
一瞬、時が止まった。
じゃあ、臨也は、
「パーティーの主催者は俺だし、シズちゃんを迎えに来た時に言えばいいとも思ったけど、・・・・・でも、どうしても1番に言いたいってさっき急に思ったんだ・・・だから、こんな真夜中に急に来たんだよばか!!」
それだけの為に、あんなに必死に・・・・・
「シズちゃんの迷惑とかそんなの一切知らないからね!だってこれは俺が満足したかっただけだし!あ、あー!満足した!!じゃあ今度こそ帰るn」
「待てよ」
掴んでいた臨也の腕をさっきよりも強く、でも折れないようにちゃんと考えて力を入れる。臨也が逃げないように。
本当、コイツは抜けている。
「し、シズちゃん?」
「お前、バカだな。」
俺は臨也が好きだ。愛してる。
俺は8年も前から臨也が好きで、それは冷めるどころか付き合ってから臨也の事を詳しく知るようになってもっと好きになった。
だから、
「な!?う、うっるさいなあ!どうせ子供っぽい考えだったよ!ほっといて!」
「違え。その事言ってんじゃねえ。」
「は?」
そんな可愛い行動をされて、
「手前、このまま簡単に帰れると思ってんのか?」
何もしないで帰すわけがない。
「あ、えっ?いや、でもね、シズちゃん、さっきも言ったけど、俺一応今回のパーティーの主催者なのね。だからその、明日(いやもう今日だけど)は朝から準備しないといけないっていうか・・・」
「ふうん?で?」
「だからっ、その、その準備に支障が出ると新羅にも怒られるし・・・・ホラ!シズちゃんだって待たせちゃうし!」
「ああ・・・なるほどな。でもそれってつまり、」
「?」
「俺が待ってもいい、って言ったら今手前を好きにしていい、って事だよな?」
「えっ・・・ちょっ、まっ・・・・・んン!!」
そして夕方。
出かけ間際に大家さんに嫌味を言われ、会場にて着いた早々新羅に説教されたのは言うまでも無い。