08/19
Thu
2010
「もう!ちゃんと聞いてる!?ドタチン!!」
「あー、聞いてる。」
と、また学生の時みたいに会話するようになったきっかけは数十分前。
「ドタチン、あのね、俺シズちゃんと付き合うようになったんだけど、ちょっと悩んでる事があって・・・ドタチン聞いてくれる?」
「・・・・・・・・・・・・わかった」
2人が付き合い始めた事に驚かなかった、と言えば嘘になる。
が、それまでの2人を知っていた俺にとっては、「ようやくか」と思う方が強かった。
しょうがない・・・・というより、悩んでる臨也が放っておけないのが大部分だったが、相談に乗ることにした。
が、これが間違った選択だったと今更思う。
「でね、シズちゃんってばすっごいウザいんだよ!今日はどうした、誰に会ったのかって毎日聞いてきてさ、」
「・・・電話で?」
「え?ううん、直接会ってだけど?」
「へえ・・・」
つまり毎日会ってんのか。
「それで報告する度に、『そいつとはもう会うな』とか『誰かに会うときは俺に言え』とかひどい時は『この仕事辞めろ』って言ってきて!」
ひどい時、ってどれもひどいと思うのは俺だけか?つうかお前もちゃんと報告すんのか・・・
「何でそう言うのか理由聞かなかったのか?」
「もちろん聞いた!したら『向こうが誘ってるとカン違いしたらどうすんだ』って訳分かんない事言ってきた!!」
・・・・つまり静雄にとって臨也がそう見えるって事だな。
「ってゆうかさあ!それ俺よりシズちゃんの方がどうなの!って思うわけ俺は!!ドタチンもそう思わない!?」
「思わない。時々仕事中の静雄を見るが、相手が女でもいつもと態度変わってないからな。」
「ちっがーう!取立ての相手じゃなくて、あの・・・後輩っていう女と・・・幼女。」
「幼女って・・・臨也、言い方を少しは考えろ。」
そう臨也言われて最近見た時の静雄を思い出す。
ああそう言われてみれば、あのトムっていう先輩の他に誰かいた気がする。・・・あんまり覚えていないが。
女の子・・・もいたか?それは覚えてない。
「それこそさぁ!そいつらだってカン違いするじゃん!って思うの!」
「何が。」
「だからっ・・・シズちゃんカッコいいし、優しいから・・・その、私のこと好きなのかもってカン違いするかもって言ってるんだよドタチンのばか!」
「俺に当たるな・・・」
っていうか今さりげなく惚気たか?
「そんなに言うなら、臨也も静雄みてえに言ってやればいいだろ。」
「・・・そんなの言えてたらドタチンに相談してないもん。」
「何でだよ。お前ならそれぐらい、」
「・・・そう言ってもし『お前よりあいつらが良い』って言われたらどうするの?」
「・・・それは臨也の考え過ぎだろ。」
「だって、最近シズちゃん仕事の話よくするんだよ。・・・楽しそうにするんだもん・・・」
そう言った臨也はいつもより小さく見えた気がした。
いつも自身に満ちた発言をしているせいなのか、らしくない発言をした臨也はなんだか・・・さっきよりも放っておけないように感じた。
「・・・もしかしたらシズちゃん、」
「考えすぎだって言ってるだろ臨也。お前が静雄を信じてやらないで、どうするんだよ。あいつは、好きな奴じゃなきゃそんな毎日毎日何したか、誰と会ったかなんて気にする奴じゃないって、それこそ臨也が1番分かってるだろ?」
「・・・うん」
「落ち着いたか?」
「・・うん、ありがとうドタ」
ガシャーン!!!
臨也がようやく落ち着いたと思った途端、ポストが飛んできた。
あー・・・これすげえ面倒くさいパターンじゃないか、これ。
「いーざぁーやぁーくぅーん?手前池袋で何してんだよコラァ!!」
「今日はドタチンに用があって来たんですー!悪い!?」
「あ゛ァ!?」
あー、臨也早速地雷踏むなよ・・・。つうか俺を巻き込まないでくれよ。静雄の視線が超痛えよ。
「んなの悪いに決まってんだろうが!ココに来るなら・・まず1番に俺に会いにこいって言ってんだよ!!」
え、どうした静雄。
「な・・・ふ、ふーんだ!シズちゃんが仕事すっごい楽しそうにしてたから俺は気を使ってあげたんです!感謝してよね!!」
「馬鹿言うな。臨也に会う以上に楽しいことなんざあるわけねえだろ。」
どうした静雄。(大事な事なので2回言いました。)
「!し、シズちゃん・・・!」
「なのに手前は俺より門田に会うのが良いって言うのかよ・・・」
「そんなわけないじゃん!俺だって、俺だってシズちゃんに会う他に嬉しいことなんてないんだからね!!」
「臨也・・・!」
・・・・・・いや、何この置いてけぼりにされた感じ。
まあ臨也の悩みが解決したのはいいんだけど、街中で抱き合うのはどうかと思うぞ2人とも。
「ドタチンありがとう!ドタチンの俺のおかげでシズちゃんをもっと好きになったよ!」
いや、それに関しては俺は何もしてない。
「じゃあ俺シズちゃんとデートしてくる!」
「ああ、行ってこい・・・」
何だろう・・・そんな時間経ってないはずなのにすげえ疲れた。
まあ、このまま2人の喧嘩が減るなら・・・・これぐらい構わないけどよ。
俺は去っていく2人を見てうっかり安心してこんな事を思ってしまったのかもしれない。
最初に思った後悔をすっかり忘れて。
そして1週間後。
「ドタチン、あのね、ちょっと悩んでる事があって・・・ドタチン聞いてくれる?」
またこの一言に、俺がまんまと乗ってしまったのは言うまでも無い。