07/10
Sat
2010
放課後、生徒会室。
この学校の生徒会長である折原臨也は、すこぶる機嫌が悪かった。
原因の大半はここ最近まともに恋人と話していないという事だった。かろうじて一緒に登校はしているが、
放課後どころか、最近は昼休みさえ生徒会の雑務に追われるようになったのだ。
家は向かいだけど、いくら幼馴染とはいえこの歳になれば、さすがに迷惑かかるから頻繁に出入りできなよなあ・・・
というのは立前で、本音は恋人同士になったが故に家に行くのがただ照れくさいだけである。
とまあ、そのような理由で折原臨也の機嫌は悪くなっていったのだ。
そして、残りの原因は────臨也の目の前にいる男だった。
「今日あなたも見たでしょう折原会長!アイツは、ああいう奴なんですよ!!」
そう得意気に言ってきた、彼は、この学校の風紀委員長だった。
彼は、ここ最近臨也の所に来ては同じようなことを言っていた。
「平和島静雄に関わらないほうがいい。あなたのためにも。」
名前も知らない彼(というか単に臨也が覚えてないだけなのだが)が言うことだけに、気にしてはなかった。
気にしてはいないが、
「ああ、確かにすごかったよねえ。あーんないとも簡単にサッカーゴールブン投げちゃうんだもんねえ~。・・・でもアレはどうみても相手側が悪かったように見えるけど?」
「そんなのはどうだっていいんです!問題はあの男が暴れまわったって事でしょう!?」
あまりのしつこさに臨也の苛々は段々大きくなっていった。
そんな臨也に気づかず、その男はさらにまくし立てた。
それが臨也の地雷だと気づかずに。
「あなたのような優秀な人が───」
+++++++++++
同時刻、とある教室。
場所は違えど、静雄も臨也と同じような状況に陥っていた。
「あいつさー、ホント何考えてるか分かんねえっつうか、絶対裏で何かやってるよなー。」
そう言ってくる男は同じクラスの男・・・らしい。
らしい、というのは静雄自身、そして新羅も覚えてなく、クラス委員である門田が教えてくれたのだ。
ちなみに、静雄が放課後残っていたのは、新羅と門田に勉強を教えてもらっていたから、
というのは立前で、本当は残っていれば久しぶりに臨也と一緒に帰れると思ったからである。
(そのことは2人には言ってはいないものの、2人にはバレバレである)
そこに、この男が現れて、急に言ってきたのだ。
おそらく毎日喧嘩してるから静雄は乗ってくると思って言い始めたのだろう。
折原臨也の悪口を。
「だってさ、あいつ噂じゃナイフ常備してんだろ?その時点でまずありえなくね?」
「・・・・あいつ非力だし、結構絡まれ易いからしょうがないんだろ。」
それに自分には効かないし、向ける相手をちゃんと選んでるから別にいいと思う。
とある意味物騒な事を考えながら、そういえばこいつ臨也と同じ会長枠で生徒会立候補してたな~とうっすら思い出していた。
ああ、だから、臨也の悪口ね。・・・器の小せぇ奴だ。
一緒にいた門田や新羅も同じ事を思っていたんだろう、相手をかわいそうな目で見ていた。そして静雄も。
そんな視線に気づかず、男は話し続ける。
静雄と臨也が恋人同士だとも知らずに。
「生徒会長になったのだって、どうせ学校を利用できるとか考えたからだろ?
「あんな暴力的で野蛮な化け物、
絶対ろくな奴じゃねえよ(ありませんよ)!!」」
ドコッ!!
ドゴン!!
一方の机は勢いよく蹴飛ばされ、もう一方の机はすでに机の原形を留めていなかった。
「「手前がアイツの事気安く語んじゃねーよ」」
そう言った顔は、相手の男が今までに見たことが無い顔だった。
「正臣君、帝人君、杏里ちゃん。俺もう帰る」
「・・・・明日その分働いてくださいよ」
「・・・・・・・・・・はーい。じゃ、おつかれ~」
「お疲れ様です。ああ、風紀委員長さんも帰っていただいて構いませんよ?ただ、」
「後期の予算・・・楽しみにしててくださいね・・・?」
「!!」
「あれ、静雄どこ行くの?」
「・・・帰る」
「復習、忘れんなよ?」
「・・・おう。」
「じゃ、俺等も帰るか。お前も、もう用無いなら帰れば?」
「っていうか、しばらく学校来ないほうが身のためなんじゃない?」
「!!」
((っていうかあんなキレ方してバレてないと思っているのか本人は))
と、後輩と友人に関係がとっくにバレているなんて当人達は露知らず、
「あれ、シズちゃんも今帰り?じゃあ一緒にかーえろ♪ところで何やってたの?」
「おう。・・・新羅達と勉強してた。」
「ええ!?何それズルイ!俺も一緒にやりたかった!!」
「じゃあ、家来いよ。まだ分かんねえとこあっから教えてくれ」
「!うん!い、行く!!教えてあげる!!あ、でもきっとおばさん居るだろうからやらしー事しちゃだめだよ!!」
「す、するかバカ!!(・・・・たぶん)」
とても幸せそうに下校していた。